Commelina communis コメリナコムニス

花の形に2タイプあるのに気づきました。１つは、下の画像のように細長い花と、もう1つは花弁の巾が広い丸い外観の花です。

　花の外観がそれぞれカンガルーとコアラの顔に似ているのでカンガルー形とコアラ形と呼ぶことにしました。

　さらに花弁のすぐ下側に見えるＸ字型おしべに注目すると、カンガルー形のツユクサとコアラ形のツユクサで形が違うことに気づきました。　

前者のＸ字型は蝶に似ているので蝶形、後者のＸ字型はきのこに似ているのできのこ形と呼ぶことにします。

　　出かけた先で採集したり、送っていただいたツユクサを調べると、カンガルー形の花のＸ字型おしべは蝶形で、

　　さて、１つのツユクサの花には3本のＸ字型おしべがありますが、その形は3本ともそっくりです。また同じ株

（１つの種子からの植物体）に咲いた花々のＸ字型おしべも互いに似ています。これらのこから、Ｘ字型おしべ

　次にカンガルー形とコアラ形のツユクサのＸ字型おしべの写真を各8株づつ載せました。1株あたり３つの花の

写真です。　まず蝶形のＸ字型おしべ（カンガルー形の花のＸ字型おしべ）を見てみましょう。

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　株(個体）ごとに違った形をしています。遺伝的に決まっていて、環境で変化はしないといえるでしょう。

　次にきのこ形Ｘ字型おしべ（コアラ形の花のＸ字型おしべ）を見てみましょう。

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以上のことから蝶形および、きのこ形Ｘ字型おしべに多型がみられることがおわかり頂けたと思います。

ツユクサの苞葉（花芽を囲んでいる小さな葉）の葉脈に白毛（散毛）の生えているタイプと生えていないタイプがあります。

次の画像のようにカンガルー形の花の苞葉の葉脈には毛が無く(無毛苞）、コアラ形の花の苞葉には毛が生えている（有毛苞）ことが

ツユクサの花を（外観→Ｘ字型おしべの形→苞葉）で観察すると、（カンガルー形→蝶形→無毛苞）タイプと

（コアラ形→きのこ形→有毛苞）タイプの２タイプがあることがわかりました。　ツユクサの花を見る機会がありましたら

どちらのタイプか観察してみるのも面白いのではないでしょうか。

　また、鳥取大学の藤島氏ら*は、ツユクサの生態種２種として、染色体数を調べています。無毛苞タイプは2n=88、

有毛苞タイプは2n=44　(地域で多少の変異がある）、また葉の気孔のサイズも２つのタイプで違いがあり、無毛苞＞有毛苞

と報告されています。私も観察したところその通りでした。

　下の画像は、ツユクサの葉の裏側の表皮をはがして、顕微鏡で２００倍で観察したものです。

散毛の無いタイプの気孔	散毛のあるタイプの気孔

２つのタイプのツユクサの人工交配　交配の組み合わせは①「きのこ形」有毛苞のめしべ　X 　「蝶形」無毛苞のおしべの花粉

②「蝶形」無毛苞のめしべ　X 「きのこ形」有毛苞おしべの花粉で行いました。①、②とも３０本ずつぐらい交配しました。「蝶形」無毛苞同士の

人工交配に比べ成功率は低く、果実ができるまで残るものは２割ぐらいで、しかもそれらの果実の中の種子は「しいな」**ばかりでした。

①の組み合わせでは、できた７個の果実のうちたった１個の果実からたった１個の種子（普通は１果実あたり４個の種子ができる）が採れただけで、残りの６個の果実

から採れた種子はすべて「しいな」でした。②の組み合わせでは６個の果実ができましたが、中の種子はすべて「しいな」でした。

調べた数は少ないのですが、この人工交配から次のようなことが考えられると思います。

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X字型おしべが「蝶形」無毛苞のツユクサと「きのこ形」有毛苞のツユクサは交雑子孫ができにくいので、

一見同じツユクサ見えるが、藤島氏ら＊が言っているように別の生態種の可能性があります。

　　　藤島弘純・橘伸*　：「ツユクサの生態種二種」遺伝２７巻(3)　(1973)

　　　「しいな」**　：果実の中の充実しない種子。　発芽は不可能。不妊。